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変形性腰椎症の手術療法に関する考え方

変形性腰椎症の治療方法は、手術療法と保存療法に分かれています。一般的には保存療法が先に行われて、患者さんの状況にあわせて手術となることが多い印象です。患者さんの目指す目的や目標・現状の満足度(いわゆるQOL)によっても手術療法を積極的に選択したり、逆に保存療法を継続していく方もいらっしゃいます。ある程度の痛みや歩きづらさはあっても大丈夫という方、痛みが少しでもあると困るという方では目的・目標・満足度に違いがあるわけです。


鍼療法も保存療法の一つです。鍼療法は、保存療法で満足されている方にとっては満足度は高い傾向にありますが、目標・目的が高く、鍼療法に対して満足度が高くない場合は手術療法に踏み切るという方もいらっしゃいます。必ずしも手術をしなければいけない、(鍼も含めて)保存療法をなるべく長く続けた方がよいということはありません。


QOLに対する考え方に基づいて、専門医と患者さんで手術療法の可否を検討することが重要ですが、中には「手術療法を強く勧められそうだからなかなか相談しづらい、、、」という方もいるかもしれません。そのほかに手術療法を嫌厭する理由として、「手術をしても治らなかったという話をきいて、、、」という声をよくききます。


変形性腰椎症で注意が必要な点は、「生活に支障をきたす可能性が高い症状が出ているかどうか」です。生活に支障が出るようであれば一般的には手術療法が検討されます。


生活に支障をきたす可能性が高い症状

  1. 強い痛みや痺れ

  2. 脱力感、歩行困難などの神経脱落症状

  3. 尿閉・失禁・便秘などの膀胱直腸障害


じつは、神経の障害度合いが高度になると、「手術をしても治らなかった」という話のとおり、後遺症が残存することがあります。手術自体はダメージを受けた神経を直接修復するために行っているわけでは無く、神経の圧迫を排除したり、腰椎を安定化されるために行うものだからです。重篤化させない・進行させないという点では手術療法を検討することに誤りはなく、むしろ「神経障害が高度な場合は早急な手術が適当」となるわけです。


脊柱管狭窄症やすべり症と聞くと、「周りにもいるから大丈夫、、、」と思う方も多いかもしれません。骨が狭くなる、骨がずれているだけではなく、中を走っている脊髄神経の障害が生じる疾患です。いわゆる「脊髄損傷」と同じということを忘れないようにして下さい。


変形性腰椎症など加齢に伴うものは中長期的なケアが必要となる印象です。悪化させないためにもまずは保存療法を根気よく続けてみて下さい。また、リハビリ(運動療法、温熱療法)や鍼灸療法などと保存療法は様々ですが、患部を強く圧迫する徒手療法(カイロ・整体のスラスト法、ポキポキ療法)などは症状悪化を招くため安易に受けないようにして下さい。なお、カイロ・整体に関しては国家資格が存在しないため注意が必要です。


当院でも、鍼療法を無理に継続させることはせず、必要に応じて専門医受診などをすすめています。とくに前述の「生活に支障をきたす可能性が高い症状」が出現した(またはすでに存在する)場合は早急な受診をすすめています。もちろん、腰痛・頚部痛などの症状に関わらず、病態把握や確定診断のためにも、まずは医療機関受診をすすめています。

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