実は、はり・きゅう・あんま指圧マッサージ・柔道整復と国家資格ありますが、すべての免許が分かれています。はり・きゅう・あんま指圧マッサージは三療法として共通科目がありますが、柔道整復は完全に別とされています。もちろん、それぞれ似ているようにみえて別の療法となっています。有資格者の中には、すべての免許を持っている方もいらっしゃいます。すべての免許があれば多くの傷病や疾患に対応できそうですが、そんなに簡単ではありません。
人に鍼を刺すためには「はり免許」が必要ですが、免許があるだけでは足りません。卒業後に研修を受けたり、職場で経験を積んだり、学会に参加したりを繰り返しながら経験を積んでいきます。ほかの専門職も同様で、相応のレベルに到達するまで、同じ過程を辿ります。そのため、一般的には一つの療法/療術に時間をかけた施術者の方がより専門性が高いといえます。三療法師(はり・きゅう・あんま指圧マッサージ)でも、すべて万遍なくできるということではなく、どちらかと言えば鍼、どちらかと言えば灸、どちらかと言えばあんま指圧マッサージに重きをおいているといった具合です。
私も鍼・灸どちらの免許も持っていますが、灸は卒業以来ほとんど扱っていません。あんま指圧マッサージに関しては免許を持っていませんし、柔道整復師でもありません。骨折・脱臼などの急性外傷の応急処置や徒手療法は出来ません。しかし、鍼に関しては本場中国に4年間国費留学をし、大学の附属病院で研修も行いました。ほとんど鍼だけに時間を費やしてきたため、鍼以外は出来ないことが多いですが、そのぶん鍼治療、とくに脳卒中後遺症やパーキンソン病・多系統萎縮症・顔面神経麻痺などの神経内科領域に関しては専門性のある施術を提供しています。
施術所選びの際、自費より健康保険利用のみ、どちらかと言えば料金の安いところに目を向ける方も多いかもしれません。しかし、鍼灸師の立場からは、お悩みの症状に対して専門性のある施術所を選ぶことをおすすめしています。とくに鍼であれば鍼、灸であれば灸、あんま指圧マッサージであればあんま指圧マッサージ、柔道整復で柔道整復に秀でているかがポイントです。また、鍼も神経内科領域や耳鼻科、婦人科、スポーツなどにも分かれているため、ホームページなどもチェックすると多くの情報が得られるはずです。
よくファミリーレストランと専門店(ラーメン屋さんなど)の関係に例えられますが、あながち間違いではない印象です。単に様々なメニューに混ざって載せられている「鍼施術」と看板メニューである「鍼施術」が同じであるとは思えません。こういった面を鑑みて、専門性の高い施術所を選ぶとよいでしょう。